とけろぐ

旅行について

私の両親はあまり旅行が好きではないのだと思う。
それでも幼少期に年に1回ほどは近隣県に家族旅行に連れて行ってくれた。
しかし、両親にとって旅行は家族サービスであり、彼ら自身が楽しんでいる様子はなかった。
私は家族旅行の度に「サービスされている」から楽しそうにしなければならないというプレッシャーを感じていた。重度の乗り物酔い体質も相まって旅行が苦痛だった。
旅行から帰ってテレビ番組を見ると心底ほっとした。なぜ旅行に行くのか分からなかった。

時は経ち、私は1人で旅行に行ける自由と財力を手に入れた。運転免許も取得した。
友人の影響もあって旅行に頻繁に行くようになった。
16、7歳まで関東甲信越の外側にはほとんど行ったことがなかったが、23歳の現在は日本の中で行ったことのない都道府県は数えるほどしかない。海外にも行った。

それでも、未だに私は旅行の楽しさが分かりきれずにいる。

どこに旅行に行っても自分自身からは逃れられない。それに、自分の中のぼんやりとした心象風景を超える景色には出会えない。
いろいろな景色を見ても「へ~」という以上の感想をなかなか抱くことができない。
「へ~」でいいのかもしれないが、何が人を旅行に駆り立てているのかが分からない。

今の私は、両親へのある種の反発心から人生においてできる限りたくさんの場所に行かなければならないという強迫観念に駆られている。だから様々な場所に旅行に行き、転居の多い人生を歩もうとしている。
しかし、結局は私も両親と同じ考え方の人間であり、どこかの段階で旅行に行くことはぱったりとやめて1つの場所に定住するのだろうなと予感している。

いつか自分の心象風景を超える景色に出会いたい。しかし、私は結局のところ自分の外側への旅よりも内側への旅を好む人間であり、そんな日は来ないのだろうなという気がする。