今まで過ごした夏休みの中でトップ3に入るぐらい何もない夏を私は過ごした。この夏休み、私は受験生としてやらねばならないことがたくさんあった。でもできなかった。他に何をやったわけでもない。私は寝てばかりいた。テレビやスマホを見てばかりいた。でもテレビやスマホを通して私の目に入ってくる、自分の進むべき道を定めて進んでいる人の姿を見るのは辛かった。だから私は逃げようとした。でもどこにも逃げ込む場所はなかった。街を歩けば人がいた。家には家族がいた。そして私の中には劣等感が棲みついていた。みんなが私を拒絶した。
本当に辛い夏休みだった。息ができなかった。息ができないのに死ぬことを許してはくれなかった。もともと夏休みが楽しかったことなんてない。学校にいると私は夢を見られる。自分は何者かであるような、自分がただのたんぱく質と水の塊以外の何らかの名前のあるものであるような、そんな幻想を抱くことができる。しかし夏休みは無情だ。そんな私の幻想をこのうだるような暑さで乾かしてどこかに追いやってしまう。
私には何もなかったし、何もできないのだ。私はどこにも行けない。私は自分が子どもの頃思っていたほど、そして今も心のどこかでは思っているほど強い人間ではないのだ。過去の自分と未来の自分、そして周りの人々が私に望んでいるやるべきことすら、私にはできない。考えるのが怖い。何かをやり続けるのが怖い。やってできなくて傷つくのが辛い。現に今私はあまりにも何もできない自分に深く傷ついている。何かをやろうと思って結局諦めることを積み重ねてきたこの50日弱をぼんやりと思い出す。やらなきゃやらなきゃと思ってもできない。自分の中に棲む何者かが自分が何かに全力で取り組むことを拒絶している。
逃げることからも逃げたくなるほど、すべてが怖くて怖くて仕方がないときはどうすればいいのか。