とけろく

大学受験コンプレックス

はじめに

ここでは、私が大学受験の過程と結果にコンプレックスを抱き、そこに折り合いをつけるまでについて記す。

大学受験まで

両親が教育熱心だったこともあり、私は子供の頃からテストが得意だった。一方でテスト以外はほとんどのことが苦手だった。音楽やスポーツは壊滅的で、他の人とのコミュニケーションもあまり得意ではなかった。

だから、自分の価値はテストで良い点がとれることだけだと子供の頃から思っていた。

しかし、今思えばテスト勉強は苦手だった。多動傾向、衝動性があり、じっと椅子に座って勉強することが難しかった。自分の価値はテストで良い点をとることだけだと思って必死に勉強しようとするが、椅子に座って問題集を開くたびに猛烈な拒否感と眠気に襲われ、様々な思いつきが頭の中にポコポコと湧いては消えて行って勉強どころではなかった。さらに、小中高と授業中に耐え難い眠気に襲われて、すべての授業の3割ほどは寝ていた。前日にいくら睡眠をとっても眠気はなかなか消えなかった。

まったく勉強できなかったという自己嫌悪を抱えながらテストに向かい、テストを受けてみるとその場の勘でまあまあ悪くない点数がとれる、その繰り返しで高校3年生までなんとなく過ごしていた。

そんな私も大学受験では本気で勉強してK大学医学部に行くぞと意気込んでいた。

しかし、今まで勉強ができなかった人間が高校3年生になって、急に勉強ができるようになるわけがないのである。

加えて高校3年生は選択授業が主だったので空きコマが増加し、さらに部活動も夏前に引退し暇な時間が大幅に増えた。これが良くなかった。

私はいくら暇な時間があっても勉強に集中できなかった。勉強に集中できないということに落ち込んで、さらに勉強が手につかなくなる悪循環に入ってしまっていた。

夏の終わり頃になると旧帝大医学部は難しそうだということを悟り、ますます勉強に身が入らなくなった。医学部はすべてE判定だった。

現役での合格は無理だと思っていたが、両親は浪人禁止のスタンスで、さらに私自身自分が浪人生として真面目に勉強できる自信がなかった。ニートになるのではないかという不安が頭をもたげてきて、さらに勉強ができなくなった。

しかし、そんな私も12月になると、さすがにこの1か月ぐらいは真面目に勉強しようと決意した。

12月5日に宇多田ヒカルのライブに行き、その後は以前の1.5~2倍ぐらい勉強した。センター試験の過去問を何度も解いて、空いた時間はひたすら教科書を読んだ。

センター試験の1週間前からは風邪予防という言い訳で外出しなくなり勉強をサボってしまったものの、センター試験ではまずまずの成績をとることができた。

自分のセンター試験の成績で合格できそうで、比較的実家に近く涼しそうな大学を受験し、合格することができた。

勉強を頑張れなかった自分への嫌悪感を抱いたまま…

大学入学後

私はラッキーで大学に合格したので、初めはそのラッキーの分努力しようと考えていたが、なかなか大学に馴染めずだんだんと腐っていってしまった。

医学部生の多くは課外の時間の多くを部活動に費やすが、医学部生の部活動は運動系と音楽系しかなく、運動と音楽が壊滅的な自分には厳しかった。中学・高校よりも部活動の規模が大きく上下関係が厳格で、そのような点においても気後れしてしまった。

学科でも部活動ごとにグループを形成していて、部活動で友人関係を構築できないと、学科で孤立してしまうことになった。

医学部ではない人も含めて、旧帝大などの大規模な大学に進学した人はサークル活動やアルバイトなどすべての活動の幅が広く、楽しそうだった。

加えて、もともと研究系に進みたいと考えていたが、やはり旧帝大卒でないと研究系は難しそうだと感じた。旧帝大にはPhD-MDコースなど研究医養成のためのプログラムがあり、学生のうちから研究で成果を上げている人がたくさんいた。自分の大学はあくまで臨床医として地域医療に貢献する人材を求めていた。

高校生の頃に「医師になってしまえば大学は関係ない」と誰かから聞いてそれを鵜呑みにしていたが、それは嘘だと思った。

そのような中、新型コロナウイルスが流行して大学の授業や課外活動が制限され、最小限の大学の授業以外はほぼすべての時間をアルバイトに費やすことになった。アルバイトでお金を貯めて自家用車を購入したことで行動範囲は広がったが、大学には何のために在籍しているのか分からない状態が続いた。4年生で対面での臨床講義・臨床実習が始まるまではいつ退学してもおかしくない精神状態だった。

もともと病気がやたらと好きで医学部に入ったということもあり、対面での臨床講義・臨床実習が始まると勉強が楽しくなった。テスト勉強は相変わらず苦手で主に一夜~朝漬けだったが、授業は眠くならずに集中して聞くことができ、知識がついている実感があった。

臨床実習では実際に働いている医師と接することができ、当初は大学に馴染めないと感じていた自分も科や分野を選べば楽しく働けそうだと思った。早く医師として働きたいと思うようになった。

また、旧帝大卒でなくても、学生時代から目覚ましい成果を上げていなくても、研究で活躍している医師はたくさんいることを知った。

勉強ができず旧帝大に入れなかったという点で私は出遅れているかもしれないが、その遅れを取り戻すぐらい積極的に行動していきたい。テスト勉強が苦手ということは受け入れて、ある程度諦めつつ少しでも集中するための工夫をしていこうと思う。