とけろぐ

フジッコ「フルーツセラピー」の思い出

私はフジッコが発売している「フルーツセラピー」というゼリーがいたく好きである。

グレープフルーツ味、ピーチ味、オレンジ味とその他季節の味があり、少しゆるめのゼリーの中に果肉とナタデココがたっぷり入っている。

すごくおいしい。

(貰ったことはないが)お中元で贈られるような高級ゼリーより、私は断然フルーツセラピーである。

私は子供の頃ナタデココが大好きだった。

当時通っていた水泳教室の帰りなどに母親にナタデココの入った飲み物を自販機で買ってもらい、大喜びで飲んでいたことを思い出す。

私が初めてフルーツセラピーを食べたのは7歳ぐらいの頃だった。

親戚の家を訪れたときに、おばあさんにグレープフルーツ味を出してもらったのだ。

当時はまだ子供だったのでグレープフルーツの苦味があまり好きではなかった。

食べようか食べまいか迷った。

ここで、私に大人の想像力が生まれた。

私がそのおばあさんと会うことは滅多にないことで、しかもおばあさんには他に親戚の子供はほとんどいなかった。

普段子供と接することはほとんどないだろうに、少し遠くて複雑な関係である私をとてもかわいがってくれて、しかも子供が喜びそうな食べ物を考えて出してくれたのだ。

だから、祖母にはやれショートケーキが好きだの、やれ飽きて嫌いになっただの、ワガママばかり言っていた私だが、そのおばあさんに同じように「グレープフルーツは苦くて嫌いです」とワガママを言う気にはなれなかった。

おそるおそる食べてみると、ナタデココという好きなものとグレープフルーツという大人のものが交じっていて、好きとも嫌いとも言えない、大人の味だった。おそらく心の底からおいしいと思うことはできないまま最後まで食べた。

フルーツセラピーを出してくれたおばあさんはもう何年も前に亡くなった。大往生だった。

今では私もすっかり小憎たらしい大人になり、苦いものを自ら好んで食べるようになった。ナタデココは相変わらず好きだ。

そんな思い出を反芻しながら、昔は大人に買ってもらっていたフルーツセラピーを、今は自分でスーパーで買ってきて6畳の部屋で1人食べている。